水俣条約、カーボンニュートラル、省エネなど様々な背景があり、従来使用されていた水銀灯などのHIDランプは2010年代からLED化が進んでいます。
普及当初は故障も多かったLEDですが、今はどんどん性能も良くなり省エネ効率が向上していますが、LED化が後回しになっている箇所も見受けられます。
今回はそのような方に、選定のポイントとオススメ照明を紹介します。
LED化が進まない設置環境とは
設置高さ15m以上の超高天井
製鉄所や造船工場などは天井高が高く、照明の設置位置が15m以上というところが多いです。水銀灯だと1000Wほどのものが設置されていて電気代がかかるため、LED化を検討していてもイニシャルコストが気になるということがあります。
一般的に15m以上の超⾼天井照明器具の投資額は、水銀灯1000W器具でもランプ・安定器込で「@33,000円/台〜@45,000円/台(定価の約50%)」でした。
ところが、LED化することにより器具単価は@150,000円/台〜250,000円/台以上‥(定価50%の場合)‥と⾼騰しています。高天井の場合、その建屋面積は広く、1棟当たり30台などと設置されているとなると
イニシャルコストがかかるため、高天井に設置している水銀灯の交換は後回しとなっています。
40℃以上の高温環境
工場内の気温は、外気温と、設備や機械から発生する熱などの影響があります。工場は壁が厚くはなく、外気温の影響は受けやすいため、工場内は「夏はかなり暑くて冬はかなり寒い」というところが多いです。
また工場内で稼働する機械が発生させる熱によって工場内の気温を高くする場合もあります。火や熱湯を利用する工場、高炉が稼働している工場は熱くなります。
様々な影響から工場内の温度が40℃を超える、夏場は外気温に照らされた天井高が60℃ほどになるというところは、LED化に注意が必要です。
一般的なLEDの使用環境保証温度は40℃のところが多く、保証温度以上の環境で使用すると長寿命なはずのLEDが短い期間で不点灯となってしまいます。
中には高温対策されたLEDも発売されていますが、通常のLEDに比べ高温対応タイプのLEDは価格が倍以上します。
それだったら高温環境でも使用できている水銀灯を使い続けるか…という方もいます。
特殊な環境で照明選定時の注意点
在庫していた水銀灯がなくなった、何台か不点灯になっているなどの状況で、LED化を検討する場合、できるだけ省エネしたい、価格を抑えたいとお考えの方、以下のような点をご注意ください。
照明寿命と交換費用
長寿命照明としてLEDはクローズアップされますが、施設の年間点灯時間を考慮することも重要です。
工場などで使用される照明の平均寿命は以下表の通りです。
照明 | 寿命 |
---|---|
水銀灯 | 12,000時間 |
セラメタ | 24,000~50,000時間 |
LED | 40,000~60,000時間 |
無電極ランプ | 40,000~60,000時間 |
ここで一般的な工場の年間点灯時間を考えてみましょう。
よくある1日10時間、月20日稼働で計算すると 10時間×20日×12か月=年間2,400時間と計算ができます。
年間2,400時間であればLEDだと4万÷2,400時間≒16年は使用できる!と考えられるかもしれませんが、違います。
LED発光部の寿命は40,000〜60,000時間ですが、LED安定器の寿命はHID安定器と同じで10年で点検、15年〜20年で交換となります。また、LEDの設置環境温度により寿命短命化が指摘されています。
要は、安定器⼀体型LED照明の寿命は「40,000〜50,000時間/15年〜20年」であり、上述した通り環境設置温度40℃以上の場合もっと寿命は短くなる可能性があります。
LEDは不点灯になると器具一式交換になります。高温環境、高天井の場合イニシャルコストが高いLEDが多いです。
対して従来使用されてきた水銀灯やセラメタはランプ寿命は短いですが、不点灯時ランプのみの交換で済みます。
水銀灯やセラメタの安定器は上述の通り「10年で点検、15年〜20年で交換」です。この寿命と交換費用の考え方は次項のコストでもう少し詳しく説明します。
コスト
コストといってもイニシャルコストとランニングコストを考える必要があります。
まずイニシャルコストですが、設置する器具単価×台数+工事費で構成されます。イニシャルコストを安価にしたい場合、以下のような方法があります。
- 器具単価を下げる
- 設置台数を減らす
- 軽い器具を選択する
軽い器具を選択するという点を解説します。器具重量によって作業人数が変わります。当然重量が重い器具のほうが人数が多く必要になり、作業時間もかかるため、結果的に工事費が高くなる場合があります。
続いてランニングコストですが、設置台数×器具の消費電力×電力単価+不点灯時の対応費で構成されます。ランニングコストを安価にしたい場合、以下のような方法があります。
- 消費電力が少ない器具を選ぶ
- 設置台数を減らす
- 照明寿命/不点灯時の交換費が安価
照明寿命が来た際や不点灯になった場合、LEDは器具一式の再投資が必要になりますが、従来の水銀灯やセラメタはランプまたは安定器のみの交換で済むのでLEDに比べると交換費は安価になります。
これらのことから照明器具を選ぶ際、1台あたりの金額や消費電力に目が行きがちですが、複数の要素が重なって投資額が決まることをご留意いただければと思います。
設置台数
前項のコストで安価にする注意点としてイニシャルコスト、ランニングコストともに共通していた項目は「設置台数を減らす」という点でした。照明の設置台数を減らせば、省エネになります。設置台数を減らすと暗くなるかも?と思われるかもしれませんが、照明の光の広がり方や設置列の調整などで台数削減は可能です。
ただし一般的にLEDは直進性が強いので、照明変更前は各種メーカーが設計する照度設計で照度のバランス確認をオススメします。
設置台数を減らすことで設置にかかる工事費も節約できます。
LED以外の選択肢E-nessライトとは
ここまでの記事でLED化が進まない場所と、器具選定の注意点をご紹介しました。ここからはLED化が進まない場所でオススメするLED以外の選択肢である「E-nessライト」についてご紹介します。
E-nessライトとは
E-nessライトはセラミックメタルハライドランプに多面体構造の反射板を組み合わせた照明です。
E-nessライトは外部からの衝撃等による破損がない限り反射板寿命は半永久的であり、ランプ・安定器は従来通り各々交換となります。多面体構造の反射板を利用することで設置台数の削減が可能です。
器具の詳細はラインナップについてはこちらからご確認いただけます。
E-nessライトのメリット
- 安定器別置きで器具重量5㎏ほどと軽量
- 設置高15m以上で使用可能
- 高温環境でも使用可能※水銀灯の置換として
- 特殊環境で使用できるのにLEDより安価
- 照明寿命/不点灯時の交換はランプまたは安定器のみで安価
- 拡散型なので設置台数の削減可能
E-nessライトのデメリット
- ランプ寿命24,000~50,000時間でLEDより短い。
※ただしLEDもE-nessライトも安定器寿命は同じ - 瞬時点灯、再点灯ができない
- 1台当たりの消費電力が大きい
高天井で使用した際のE-nessライトと高天井用LEDの比較
各社が公開しているIESデータを元に平均照度300Lxの同一条件で照度分布図作成し灯数等⽐較しました。
※設計条件:エリア64m×44m/器具取付⾼さ25m/反射率天井50%壁30%床10%/保守率は各社公開資料の通り
器具費用:器具定価×50%×台数
稼働時間:1日10時間×月20日×12か月=年間2,400時間
電気単価:20/kwh
器具 | 定価 | 器具 消費電力 |
平均照度 | 台数 | 消費電力 | 器具費用 | 年間消費電力 | 水銀灯との 年間電気代 差額 |
減価償却年数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
水銀灯 (参考値) |
1045W | 311lx | 48台 | 50.2KWh | |||||
イーネスライト | ¥250,000 | 435W | 304lx | 28台 | 12.2KWh | ¥3,500,000 | ¥584,640 | ¥1,823,040 | 1.5年 |
A社LED | ¥454,000 | 277.7W | 320lx | 35台 | 9.7KWh | ¥7,945,000 | ¥466,536 | ¥1,941,144 | 4.1年 |
B社LED | ¥460,000 | 275.2W | 322lx | 35台 | 9.6KWh | ¥8,050,000 | ¥462,336 | ¥1,945,344 | 3.7年 |
C社LED | ¥384,000 | 238.5W | 339lx | 40台 | 9.5KWh | ¥7,680,000 | ¥457,920 | ¥1,949,760 | 3.9年 |
D社LED | ¥367,500 | 390.0W | 316lx | 32台 | 12.5KWh | ¥5,880,000 | ¥599,040 | ¥1,808,640 | 3.3年 |
この表を確認するとE-nessライトは器具投資額は安いですが、消費電力はLEDよりも劣っていることが分かります。
ランニングコストを重要視するか、イニシャルコストを重要視するかで選択肢が変わることがわかっていただけるかと思います。
超高天井や高温環境の場合、器具自体が高価になることや交換のしずらさがありますので何を重視するかを検討の上、ご判断いただくことをオススメします。
最後に
よく知られているようにLEDはどんどん進化を続けており、10年ほど前は不得意だった用途も対応できる器具というものも発売されています。
今更セラメタ?と思われる方もおられるかもしれませんが、高天井や高温環境など何かあれば交換が大変な箇所ほど、従来から使用されている照明が重宝されています。
弊社ではイーネスライト他、LEDや無電極ランプなど各環境や用途に応じた提案ができる製品を揃えておりますので気になった方はぜひ下記フォームよりお問合せください。
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