次世代クリーンエネルギー「水素」が注目される背景と、適したガスケットのご紹介

最終更新日: 公開日: 2024/08

欧州委員会が発表した「EUグリーンディール産業計画」は世界的に脱炭素化を推進し、次世代のクリーンエネルギー「水素」の普及を目指しているのが特徴となっています。

このブログでは、次世代クリーンエネルギーとして普及が期待される「水素」および、その「水素」に使用できるガスケットについて紹介します。

EUグリーンディール産業計画(GDIP)とは

欧州委員会が発表した「EUグリーンディール産業計画(GDIP)」は、ネットゼロ時代に向けて、EU産業の炭素排出量を実質ゼロにし、気候中立性を目指し、競争力を高めるための枠組みです。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻によりエネルギー危機が悪化したため、EUはロシアからの化石燃料輸入依存を減らし、安全で競争力のあるエネルギー供給を確保することを決定しました。2023年2月1日、欧州委員会は、ネットゼロ時代に向けたグリーンディール産業計画に関する報告書「EUグリーンディール産業計画(GDIP)」を発表しました。

「EUグリーンディール産業計画(GDIP)」とは、EU産業が炭素排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、気候中立性へ移行し、競争力を高めることを支援することを目的とした枠組みです。

EU諸国ではエネルギー輸入のほとんどをロシア単一に輸入依存していたため、2021年頃からエネルギー危機が悪化する事態となりました。

そこで、2023年2月、欧州委員会はEU諸国がロシアからの主要技術および商品の輸入依存度を削減し、脱炭素化の加速を進めて、次世代クリーンエネルギー「水素」の普及を目指すことを発表しました。

EU水素戦略とは

「EUグリーンディール産業計画(GDIP)」の重要な柱となっているのが、2020年7月に採択された「EU水素戦略」です。

水素」は次世代のクリーンエネルギーとして、EUの2040年気候目標の重要な要素であり、輸送と産業の脱炭素化において重要な役割を果たすことが期待されています。
「EU水素戦略」は再生可能資源から「グリーン水素」を開発し、2050年までにEUのエネルギー供給の一部となることを目指しています。

「EU水素戦略」には、投資支援、生産と需要の支援、水素市場とインフラの創設、研究と協力、国際協力の5つの政策行動分野が含まれており、欧州委員会はEU各国政府が再生可能エネルギーや脱炭素化産業への投資を支援できるように、2025年末まで国家補助規則を緩和することを提案しました。

クリーンエネルギーとして注目される水素とは

「水素」は、天然ガス、原子力、バイオマス、太陽光や風力などの再生可能エネルギーなど、さまざまな国内資源から製造できるクリーンなエネルギー源として知られています。

水素は燃料電池で消費されると水と少量の熱のみを生成し、温室効果ガスを排出せずに様々な用途に活用できるため、脱炭素化を実現する重要なエネルギーになると期待されています。

水素とは

そもそも「水素」とは無色の気体のことで、反応性が高く、空気中で容易に燃焼するのが特徴です。

水素は水蒸気と暖かい空気のみを排出し、二酸化炭素や温室効果ガス(GHG)を一切排出せずに燃やすことができ、大気汚染物質を生成せず、廃棄物は水だけです。

水素は、そのエネルギーを電気に変換する「燃料電池」でも使用することができ、水素は持続可能なエネルギーミックスの長期的な一部として注目を集めています。

▼水素の用途

水素には再生可能燃料として次のような多くの用途があります。

  • 輸送:水素は、道路、航空、船舶輸送用の軽量燃料として使用できます。 DHL は無給油で 500 km を走行できる「H2 パネル バン」を保有しています。
  • 工業用品:水素は工業用品をクリーンに生産するために使用できます。
  • 合成肥料:水素は、合成肥料の主要成分であるアンモニアの製造に使用できます。

水素利用の課題としては、地球上に純粋な水素の豊富な天然源はほとんどないため、水素製造のためにメタンや水など、水素を含む化合物から製造する必要があることです。

水素自体を燃焼させればクリーンなエネルギーですが、現在のほとんどの水素製造では炭素と温室効果ガスの排出をもたらすことが大きな課題となっています。

数ある水素製造方法の中でも、「グリーン水素」は電気を使用して水 (H20) を水素と酸素に分解し、水の電気分解によって水素を生成する環境に優しい製造方法です。

また、水素は保管も簡単で製造時以外にも他の目的や時期に使用可能ですが、水素は最小の分子であるため閉じ込めるのが難しく、逃がさないようにすることが重要です。

日本での水素化の
状況

日本においても国内での製造や海外からの資源の調達先の多様化を見据えて、クリーンな水素技術の研究とイノベーションを推進する取り組みが積極的に行われています。

【取り組み事例】

  • 川崎重工業…2024年の後半に水素基地用大型液化水素タンクの設計審査、船舶用水素エンジンの陸上での運転試験を予定している。
  • 伊藤忠商事や大阪ガスが出資するデンマークEverfuel…世界最大規模となる年間3000tの水素生産を開始した。

水が電気分解によって水素に変換されれば、今後はさらに多くの分野で産業、輸送、建物の分野で柔軟に使用したり、貯蔵したりすることができるようになるでしょう。

参照:経済産業省・資源エネルギー庁|水素社会実現に向けた取組|資源エネルギー庁

水素をシール(ガスケット)する際の注意点

水素のシール(ガスケット)には、分子サイズの小ささ、拡散性の高さ、潜在的な反応性のために課題があります。

▼効果的で安全なシーリングを確保するための注意事項

  1. 材料適合性
    水素は分子が小さく、多くの一般的な材料を透過します。水素用に特別に設計されたガスケット材料(ニッケルのような金属や特別に調合されたポリマー製)を選びましょう。
  2. 漏れ
    水素は粘度が低いため、わずかな漏れでも重大な影響を及ぼす可能性があります。ガスケット材料がしっかりとしたシールを形成することを確認し、重要な用途には二重ガスケットを検討しましょう。
  3. 脆化
    一部の材料、特に特定の高強度鋼は、水素にさらされると脆くなることがあります。シールや周辺部品の亀裂や故障につながる可能性があります。選択した材料が長期間、適合することを確認してください。

▼その他の安全上の注意事項

水素は非常に可燃性が高いので、 換気の良い場所で作業し、水素の近くに着火源がないようにしてください。水素は無色無臭です。水素漏れ検知器を使用して、漏れを特定します。

漏洩した水素は非常に可燃性が高く、空気と爆発性混合物を形成する可能性があります。

防爆型の機器を使用し、水素システムの近くに着火源がないようにして、必要に応じて、防炎装置および圧力開放装置を設置します。

▼定期メンテナンス

  • 点検と交換
    定期的にガスケットおよびシールを点検し、摩耗、劣化、漏れの兆候がないか確認します。予期せぬ故障を防ぐため、ガスケットは予定された間隔、または損傷が検出された場合に交換します。
  • 文書化および訓練
    ガスケット材料、設置手順、検査スケジュールの詳細な記録を維持します。

水素システムの作業に関する特定の要件と安全手順について、作業員が適切な訓練を受け ていることを確認しましょう。
これらの点に細心の注意を払うことで、水素シールアプリケーションの信頼性と安全性を高め、長期的な性能を確保し、水素漏れに関連するリスクを最小限に抑えることができます。

EUの「水素戦略」に最適なDONIT製品”BA-SOFT”

ガスケットメーカー「DONIT TESNIT社(ドニットテスニット)」は、石綿を含まないガスケット シートの世界トップメーカーです。単一拠点での生産は EU 内で最大規模を誇ります。

「DONIT TESNIT社」は世界のシール材メーカーの中で高い評価を得ており、ガスケット技術の進歩の最前線に立ち、常に高品質のシール材の生産に努めています。

コタニ株式会社は「DONIT TESNIT社」の日本総代理店でノンアスベストシートガスケットによる環境保全とともに推進しています。

水素のガスケットの最適なBA-SOFTとは

BA-SOFTは、NBRとアラミド繊維がベースとなっているジョイントシートで、製品名にソフトとつけているだけあり、ガスケットシートにしてはゴムのように柔らかいのが一番の特徴です。
柔らかいため、➀低圧でもシールできる、➁フランジ面の凹凸にもなじむ というメリットがあります。
このBA-SOFTは、水素のシールとしても使用できることが、メーカーであるDONIT社の試験システムで証明されています。

水素の漏れを判定する試験システムで分かるBA-SOFTのシール性

2021年DONIT調査開発用途技術研究所から、水素の漏れを判定するガスケット試験設備が登場しました。
一般的にガスケットのシール性を判定するために使用される流体は窒素ガスかヘリウムガスですが、この設備では水素ガスを試験媒体としています。

この装置を用いて、BA-SOFTと同じ材料で作られているBA-Uを比較して漏れ量を計測しました。試験条件は以下です。

【試験A】

  • 流体:➀ヘリウムガス ➁水素ガス
  • 温度:常温
  • 圧力:5~40バール
  • 締付面圧:30MPa
  • ガスケット寸法:DN40/PN40

この試験の結果は以下の通りです。

質量漏れ
体積漏れ

BA-UよりもBA-SOFTのほうが漏れ量が少なく、またヘリウムと水素では漏れ量に大きな差が出ないことが分かります。

次に締付面圧15MPaにしたときのBA-SOFTの各ガスの漏れ量を計測しました。

【試験B】

  • 流体:➀ヘリウムガス ➁水素ガス
  • 温度:常温
  • 圧力:5~40バール
  • 締付面圧:15MPa
  • ガスケット寸法:DN40/PN40
質量漏れ
体積漏れ

やはり15MPaにすると30MPaに比べると大幅に漏れ量は増加しますが、これは試験AのBA-Uと漏れ量としては同レベルの漏れ量ですので、BA-SOFTが低圧でもシールできていることが分かります。
水素は上述したように爆発する可能性がある危険な物質です。いつも以上に選定に関しては慎重にお選びください。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。今回は環境面からも需要が伸びる水素において、注目される背景やガスケットを選ぶ時の注意点を記載しました。

次世代クリーンエネルギー「水素」が大規模に商業的に利用される流れに備えて、長期的なエネルギー経路計画として早めに取り入れることが推奨されます。

水素のシールに関してお悩みがありましたら是非お問合せください。

お問い合わせフォーム

 

個人情報保護方針