今まで詳しい内容を説明しなかった固定シール用補助材を紹介します。
なお、参考資料は日本規格協会発行の「密封装置選定のポイント」と宗氏の「シールのごくい」などです。
1 全般
固定シールは、管フランジや各種機器接手部に使用され、いかなる環境条件においても、十分なシール特性を維持されることが要求されます。
シール材に使用される工業材料は数多くありますが、要求される諸特性をすべて備え持っているものは一つとしてありません。
従って、その用途・目的・対費用効果等を検討し、諸条件に適合した最適材料を選ぶことがシール材選定のポイントです。また選定された材料の欠点や短所を、設計や使用上の注意事項でどこまでカバーでき、許容できる範囲まで引き下げるかがシール材の上手な使い方と言えます。
こうした材料上の欠点や短所は色々ありますが、シール材以外の材料と併用することでこの問題をカバーできこともあります。
このように、全く異質のものをで、シール材の特定の性能を改善したり、向上させるものをシールの補助材と言います。
固定用シール補助材を機能的に見ますと、以下の3種類に区分できます。
① シーラント(シール性改良材)
② 焼付防止材
③ 防錆材
2 シーラント
シーラント(Sealant)(液状ガスケット)
とは、ガスケットの表面に塗布したり、貼り付けて、表面状態を改質させ、シール性を改善させる機能を持った材料です。
高分子化合物を材料とした液状又は粘着性の流体で、接合面に塗布してシールします。塗布後は固化あるいは高粘着皮膜を作り、これでシールの働きをします。
シーラントはガスケットに比べ、温度、圧力条件が酷でない場合に使用されます。
接手フランジの表面仕上げ精度が悪いと、ガスケットとフランジ面に馴染ませるために大きな締付力が必要となります。また、仕上げ精度
が良くても締付力が小さい場合、フランジのわずかな凹凸部に食い込まず漏れ跡が残ってしまいます。
こうした場合に併用するのがシーラントです。(下図参照)
すなわち、漏れ易い状態を、流動性(又は柔軟性)のあるシーラントを併用すると、大幅にシール性を改善できる訳です。
図1 シーラントの効果
シーラントの種類には①液状ガスケット②ガスケットペースト③PTFEペースト④膨張黒鉛テープ⑤その他があります。
・シーラントが塗布後硬化皮膜を作る過程
シーラントの成分によって異なり、①自然硬化 ②加硫剤による加硫硬化 ③高温で軟化し、液状になったものが使用時に低温で固まる、などいろいろあります。
なお加硫で硬化する合成ゴムを材料にしたシーラントは、硬化と同時に接着性があるので、シールとしてのみでなく接着剤の働きを兼ねたものが多い。
・作用から見たシーラントの分類
1.硬化皮膜をつくるもの
①塗布後の加熱によるもの
②加硫剤を加えておき熱によって加硫硬化させるもの
③乾性油に合成樹脂を混ぜ、塗布後乾性油が酸素によって硬化する作用を利用したもの、があります。
加硫硬化のものは強力な接着力があり、弾性に富むので、屈曲、振動のある箇所に用いられます。
2.粘着性をもち硬化皮膜を作らぬもの
合成ゴムに液状可塑剤を加えたものが多い、極めて低圧の接手などのシールに使われています。
3.テープ状のもの
合成樹脂の薄い皮膜やこれを布で補強したものがあるが、これは簡単な穴やすき間の回り止めに使用されています。
4.使用上の注意
①垂直面のシールには液状シーラントは不向きで、粘度の大きいシーラントを用います。
②接手部分で流動性のシーラントが使用できない時には、テープ状シーラントを用います。配管のねじの接手にはPTFEの生テープが多く使われるのは、PTFEは油、薬品に耐え、高温・低温でも変質せず、取扱いが容易のためです。
図2に接手にシーラントを使用した例を示します。
図2 接手にシーラントを使用した例
・ガスケットペースト
一般に、ガスケットペーストと呼ばれているものは、黒鉛や雲母を主材としてこれに油脂、皮膜剤、粘稠剤、分散剤、防錆剤などを混合し、ペースト状にしたものです。
液状ガスケットのような強い粘着力と弾性はないが、柔軟性と流動性があるためシーラントとして相応の機能を有しています。
・PTFEペースト
PTFEの粉末を水やふっ素オイルに分散し、粘稠剤や分散剤を添加したケミカル流体用のシーラントとして使用されます。