新JIS B 2401のシリーズの紹介
2011年の11月にJISC(日本工業標準調査会)で、新JISの意見受付公示でJIS B 2401のシリーズが出ていました。(既に意見の受付は完了しています。)
今迄にベースになるISO 3601シリーズで解説しましたが、内容が相当変わっていますので、しばらく詳しく解説いたします。(多分、本年にはこのJISは発行される予定だと思います。)
JIS B 2401のシリーズは次の4点から構成されています。
- JIS B 2401-1 Oリング‐第1部: Oリング
- JIS B 2401-2 Oリング‐第2部: ハウジングの形状・寸法
- JIS B 2401-3 Oリング‐第3部: 外観品質基準
- JIS B 2401-4 Oリング‐第4部: バックアップリング
従って、従来発行されていました次のJIS規格が廃止されます。
廃止となるJIS規格
なお、ISO 3601-5 Fluid power systems- O-rings -Part 5: Suitability of elastomeric materials for industrial applicationsのJIS B 2410「Oリング‐ゴム材料の選定指針」はそのままで継続して、新シリーズには含まれないことになっています。
理由は今後この規格に材料の特性規格を含める可能性もあるためと思われます。
JIS B 2401-1 Oリング-第1部:Oリングについて
この規格では、Oリングの種類は次表のようになっています。
Oリングの種類 | 種類を表す記号 |
---|---|
運動用Oリング | P |
固定用Oリング | G |
真空用Oリング | V |
ISO一般工業用Oリング | F |
ISO精密機器用Oリング | S |
P.G.Vは既にご存知のように従来からありました種類で変更はありません。
ISO一般工業用Oリングは、従来のこのJIS規格にはなかった新シリーズとなる種類です。
ISO3601-1で説明していました米国のAS568シリーズと同じタイプのインチ系をベースにしたものです。
次にISO精密機器用Oリングとは今までのJIS B 2401に記載されていましたシリーズGで新たに名称を変更したミリ系のOリングです。
ゴム材料の種類は以前の規格から大きく変更されていますので、注意が必要です。
材料の種類 | タイプA デュロメータ 硬さ |
材料の種類 を表す識別 記号 |
識別記号の意味 | 従来の識別記号 (参考)(今後使用 しない) |
---|---|---|---|---|
一般用 ニトリルゴム [NBR] |
70 | NBR-70-1 | 耐鉱物油用でタイプAデュロメータ硬さA70のもの | 1種A又は1A |
90 | NBR-90 | 耐鉱物油用でタイプAデュロメータ硬さA90のもの | 1種B又は1B | |
燃料用 ニトリルゴム [NBR] |
70 | NBR-70-2 | 耐ガソリン用でタイプAデュロメータ硬さA70のもの | 2種又は2 |
水素化 ニトリルゴム [HNBR] |
70 | HNBR-70 | 耐鉱物油・耐熱用でタイプAデュロメータ硬さA70のもの | - |
90 | HNBR-90 | 耐鉱物油・耐熱用でタイプAデュロメータ硬さA90のものもの | - | |
フッ素ゴム [FKM] |
70 | FKM-70 | 耐熱用でタイプAデュロメータ硬さA70のもの | 4種D又は4D |
90 | FKM-90 | 耐熱用でタイプAデュロメータ硬さA90のもの | - | |
エチレンプロピレンゴム [EPDM] | 70 | EPDM-70 | 耐動植物油・ブレーキ油用でタイプAデュロメータ硬さA70のもの | 3種又は3 |
90 | EPDM-90 | 耐動植物油・ブレーキ油用でタイプAデュロメータ 硬さA90のもの | - | |
シリコーンゴム [VMQ] |
70 | VMQ-70 | 耐熱・耐寒用でタイプAデュロメータ硬さA70のもの | 4種C又は4C |
アクリルゴム [ACM] |
70 | ACM-70 | 耐熱・耐鉱物油用でタイプAデュロメータ硬さA70のもの | - |
Oリングの外観品質基準は従来JIS B 2408を呼び出していましたが、既にご存知のようにJIS B 2401-3の適用になっています。
次に基本材料の物理的性質は、新しい種類も含めてすべて規定されています。内容が多いので、ここでは省略させてもらいます。
しかし、試験内容の項目はすべて過去の規定と形態となっています。
また製品の識別コードは非常に難しく、かつ、長くなっています。例で指示されていますものを示します。
例1材料NBR-70-1,固定用Oリング呼び番号G80,品質等級Nの場合
OR□NBR-70-1□G80-N (□は、ブランクとする)
例2材料FKM-70,内径86.5,太さ5.5,品質等級CSの場合
OR□FKM-70□86.5×5.5-CS (□は、ブランクとする)
例3(ISOのOリングの場合)
ISOシリーズF,呼び番号011,許容差クラスA,品質等級Sの場合OR□ISO-F-011-A-S (□は、ブランクとする)
例4(ISOの規定外のシリーズFの場合)ISO規定外シリーズF, 内径68.50,太さ2.62,許容差クラスA,品質等級Sの場合
OR□ISO-F-68.50×2.62-A-S(□は、ブランクとする)
例5(ISOシリーズSのOリング場合)
ISOシリーズS,呼び番号C0545,品質等級CSの場合
OR□ISO-S-C0545-CS(□は、ブランクとする)
以上のように規格に記載されていますが、少し、気になるのは、ISOシリーズでは一切材料の識別コードが記載されていないので、別個に追加すべきことになる点ですが、このことについて触れられていない点です。
製品の識別コードは馴染むまで時間が要することになることでしょう。
しかし、この規格では新たに規格としても新たに市場で良く使用されているゴム材料が追加されたことはよかったと思います。
なお、寸法の許容差についても触れておきます。
従来のP,G,VではOリング内径許容差は、VMQ及びACMはベースのNBR(EPDM)の1.5倍、FKM及びHNBRはNBR(EPDM)の1.2倍となっています。
当然のことながらゴムの硬さに70と90のものがあるものも同等の扱いになります。しかしながらISOシリーズのOリングでは許容差のクラス別がありますが、このクラス別と適用するゴム材料との関係が述べられていないので、個々に受渡し間での付帯事項になる可能性があります。できれば、このあたりISOがらみのOリングでは不明点が多く存在していることが問題かも知れません。
JIS B 2401-2 Oリング‐第2部: ハウジングの形状・寸法について
まず、従来のP,Gのハウジングは変更ありません。
なお、強いて苦情を言えば、運動用ではISOシリーズのハウジングで示されているように油圧用、空気圧用として区別されていません。相当以前から、運動用(P)用のハウジングを空気圧用に使用すると抵抗が大きく、寿命も短いとの苦情が多くありました。そのため、空気圧機器メーカでは独自にハウジングを規定して使用されていました。
このような事情を理解して今回の大改正する時に配慮してもらえばよかったのではないかと感じました。
またOリングの使用する場合の設計理論があるはずです。ISOシリーズではその理論を展開することにより、ハウジングを決める手段を講じている点は理想的であると言えます。
例えば、ピストン用、ロッド用、また油圧用・空気圧用(運動用、固定用)及び平面用と各用途別にハウジングを決めていることです。JIS B 2401の思想とは合い入れない事情がありますが、理論武装が不十分であることは明確です。つぶし代の定義やOリングの引き伸ばしによるOリングの細りなどを従来のOリングについても説明があってもよかったような気がしました。
特にISO Oリングでは引き伸ばしによるOリングの細り代を配慮しています。
または装着性を考慮した設計ができているなど評価できる点が大きいと言えます。
余談ですが、米国の唯一のOリングの規格であるAS568については、非常にきめ細かい設計思想が展開されています。
- ARP1231: Gland Design, Elastomeric O-ring Seals, General Consideration
- ARP1232: Gland Design, Elastomeric O-ring Seals, Static Radial
- ARP1233: Gland Design, Elastomeric O-ring Seals, Dynamic Radial, 1500psi max
- ARP1234: Gland Design, Elastomeric O-ring Seals, Static Axial, Without Back-Up-Rings
- AS 4716 Gland Design, O-ring and other Elastomeric Seals
- AS 4873 Gland Design, Elastomeric O-ring Seals, Static Radial and Face 800psi maximum Service
- AS 5857 Gland Design, O-ring and other Elastomeric Seals, Static Applications
などがあり、用途別にきめ細かく、シール設計を展開してハウジングを決めている点はさすがだと感心します。このような展開が、使用者には安心して使用し易いことになります。
少し、違う方向で説明しましたが、筆者の考え方を述べさせてもらいました。
やはり最近ではシール全般についてもその設計思想が問われる時代です。
Oリングのハウジングの設計は大切なので、もう少し内容を見ていきます。
このARPはAerospace Recommended Practices の頭文字を取ったものです。
Oリングのハウジングの基本設計はARP1231をベースにしています。
記載の内容は
- 1)ハウジング形状の基本的な図面と面取りや偏芯の定義を説明。
- 2)ハウジングは、用途(流体、ゴム材料、圧力、温度など)により、標準以外も必要であることを明示している。しかし、標準以外については、ハウジングの設計には必要条件を確認して行うことを強調している。
- 3)ハウジングにおけるOリングの選定に影響を与える内容は
- (1) 流体との適合性(AIR786:Elastomeric Compatibility Consideration relative to O-ring and Sealant selectionを参照)
- (2) 圧力の影響への配慮(はみ出し現象)、はみ出し曲線の提示とその使用方法の説明とバックアップリングの併用方法
- (3) 使用温度への配慮(高温時と低温時の場合の影響と配慮すべき事項、ゴム材料の選定)
- (4) サイズの選定(AS568からの選定、太いものは、Oリングのねじれ対策となるし、また低温用にも効果ありと説明。内径と太さとの関係にも触れている。)
4)設計基準
- (1) Oリングの内径の引き伸ばし計算方法とその推奨値
- (2) Oリングのつぶし率(配慮すべき事項:抵抗、ゴム硬さ、圧縮ひずみの関係、熱膨張、圧力によるハウジングの変形(breathing)、Oリングの引き伸ばしによる太さの細りの計算式(この計算方式は、最近他の方式のものが、使用されてきているので、少し古くなった)
- (3) 流体によるゴムへの影響(膨潤、収縮)を配慮した溝幅の配慮した計算式
- (4) バックアップリングに関する使用上の配慮すべき事項
- (5) スリッパシール(現在では組み合わせシールと呼んでいる)の紹介
この規格を基本にして以下の規格が設定されている。
ARP1232 は円筒面の固定用ハウジングの設計と寸法を示している。(Oリングの引き伸ばし率は最低2%としている)
ARP1233 は10.5MPaまでの円筒面用運動用ハウジングの説明と寸法を示す。
ARP1234 は平用での固定用ハウジングの設計と寸法を示す。
従来規格のAS4716以外に、最近では固定用でつぶし率を上げたAS5857 Gland Design, O-ring and Other Elastomeric Seals, Static Applicationsなども発行されています。
新JISは平成24年3月21日に発行済。
真空用(G)については、将来性を見極めた処置が講じられたことは良かったと思います。旧JIS B 2406には真空用のハウジング寸法は該当するJIS B 2290「真空装置用フランジ」を呼び出していました。
しかし、1998年度版(最新)では、Oリング(V)を使用する真空用ハウジング寸法は、規格本体から外された上、附属書(参考)に移されました。この内容では、「この附属書は、これまで使用されていたJIS B 2290:1968が産業に深く浸透していることを考慮し、保守用として用いる真空フランジの寸法について記述したものであり、規格の一部でない。」との位置づけとなり、将来削除されることが予想させるような表現となっていました。またサイズではV15の該当するハウジングもなかったことも配慮して、新にこの規格にハウジング寸法を導入したようです。更にハウジング寸法にすべて許容差が入れられた。(JIS B 2290ではこの許容差も指示されていなかった。)
ただし、公示されている規格ではハウジングの詳細断面図が省略されていました。(従来から溝部のコーナの面取り1Cがありましたがなくなっていました。案外重要な役目があったはずです。)
ISO関連のOリングに関するハウジングはその設計思想が明確に示された上、それに基づき規定されています。
まず、シリーズFについては、次のように考えれば良いと思っています。
AS568(米国のインチ系Oリング)が、産業用にすべての用途に向けてのハウジングが作成できたことで利用できるようになった。しかし、従来のP,G,VのOリングと比較するとハウジング寸法は、標準数を取った整数でなく、管理上少し扱い難いとのイメージがあるでしょう。
しかし、Oリングのサイズが追加された上、太さの小さいものでも大きな内径のものが使用できると考えれば設計に自由度が上がったことになります。
また設計思想を良く読んで消化できれば、新規に設計することも更に簡単になることも言えます。
しかし、相当以前にも言いましたが、真のミリ系のOリングが誕生して、ロッド径やチューブ径に標準数を使えるハウジングができればよかったかもしれません。(将来に希望を残して置きましょう。)
残念なことがまだあります。ISOでは表面仕上げに負荷曲線の性状を加える事が規定されていましたが、今回時期早々と実績が少ないとの理由(?)で取り入れなかったことです。
いまやEUや米国でのOリングやパッキンのカタログでは相手面の表面仕上げには負荷曲線が必要と説明されているものが多くなっています。
JIS B 2401-3 Oリング‐第3部: 外観品質基準について
現在で発行されているJIS B 2408を改正したものですが、最近の該当ISO3601-3;2005に基づき変更されています。
まず、欠陥の用語及び定義には今回、ISOに含まれていない3点が新たに追加されました。その3点は
- 裂け(rupture): 通常は破断した形となる、せん断状の裂け。
- クラック(crack): ゴムの鋭い割れ目、裂け目又は小さい亀裂。
- ブリスタ(blister): ゴムの表面に発生した中空の膨れ。
これらは、将来、ISOに提案して追加することを配慮したためと考えられます。
しかし、問題があるのは、その定義はされていますが、肝心の外観品質基準では図面や写真が示されていないことです。
「表面の状態で、これらは倍率2倍の照明付き拡大鏡によってOリングを獣状態で観察したとき、これらの欠陥があってはならない。」と規定しています。特にクラックなどの欠陥は往々にして、自由状態ではなく、曲げるなどして見つけることが多いことも事実です。(筆者の独断ですが)
次に品質等級が変更となり、3つの等級になりました。
- 等級N : この等級は、一般に用いるOリングの外観品質基準を示す。
- 等級S: この等級は、高度なレベルを要求する用途に用いるOリングの外観品質基準を示す。
航空機、自動車及びその他の重要な工業製品に用いるOリングには、この等級を適用する。 - 等級CS: この等級は、更に高度な品質を要求する用途に用いるOリングの外観品質基準を示す。航空宇宙機器、医療機器などのより高い信頼性が要求される重要な危機に用いるOリングには、この等級を適用する。
この 3.の等級CS が新たに追加されました。
ただし、等級選択では、使用者が購買時点で等級を指定しない場合には、Oリングの等級はNとなり、ISO精密機器用Oリング(シリーズS)においては、同様に指示がなければ、等級はSとなることも規定しています。
特に、等級CSでは、従来認めていた欠陥のひけなどは許容しないなどと厳しいものとなっています。
これらの等級については、最終的には、製品のコストに大きく影響される事になりますので、使用される箇所とその重要性を確認することの大切さが必要になります。
JIS B 2401-4 Oリング‐第4部: バックアップリングについて
現在で発行されているJIS B 2407を改正したものですが、最近の該当ISO3601-4;2008に基づき変更されています。
従来の規格と比較しますとISO用Oリングに関しては新たに新設していますが、元々のOリングのP,G用バックアップリングとはあまり変わりはありません。
次に変更になった事項を上げますと、
1) 製品の識別コード:例1
BR□JIS B 2401-4-T1-P20 (□はブランクです)
T1は種類記号(形状と材料によるもので、下表のとおりです)
種類記号 | 材料 | 色 | 形状 |
---|---|---|---|
T1 | 四ふっ化エチレン樹脂 | 乳白色 | スパイラル |
T2 | 四ふっ化エチレン樹脂 | 乳白色 | バイアスカット |
T3 | 四ふっ化エチレン樹脂 | 乳白色 | エンドレス |
T4 | 充填材入り四ふっ化エチレン樹脂 | 茶褐色 | スパイラル |
T5 | 充填材入り四ふっ化エチレン樹脂 | 茶褐色 | バイアスカット |
T6 | 充填材入り四ふっ化エチレン樹脂 | 茶褐色 | エンドレス |
最後のP20はサイズです。
例2(ISO用Oリング用)
BR□JIS B 2401-4-T1-699-RD-020000-021180 と非常に難しくなっています。
まず、699はOリングの太さで表示は値の100倍しています。(太さ6.99㎜)
RDは用途の記号です。(ピストン運動用:PD、ピストン固定用:PS、ロッド運動用:RD、ロッド固定用:RSで、例はロッド運動用となります)
020000はロッド径(mm)またはシリンダ内径(mm)を100倍しています。
(例ではロッド径が200.00mmを示しています)
最後の021180はハウジング溝径を示しています。
次にISOのOリング用バックアップリングの寸法は、従来のP,Gのような各寸法の提示ではなく、各要素について、ISOどおりで記載しています。
- 太さ毎にスプイラルのすきま、バックアップリングの厚さ及び幅。
- ブックアップリングの外径及び内径の許容差は外径又は内径の寸法に区分ごとに設定しています。
従って、JIS B 2401-2のISOのOリングのハウジング寸法とペアとなっています。この面では、各社のカタログで寸法表が発行されれば解り易くなると思います。今回、ISOに新設されていましたConcaveタイプのシリーズは国内での実績が少ないなどの理由で削除されています。以前にもISOの紹介で述べましたが、この新形状はユニークで、大いに利用価値があると思っていました。
(Oリングに対して保護し易い。ただし、装着には方向性が限定されることが欠点です。)
まとめ
JIS B 2401のシリーズについての全貌を説明してきました。
本来では、多分、JIS B 2401-5としてJIS B 2410のOリング-ゴム材料の選定指針が追加される予定であったと思われます。しかし、現在のこの規格であるISO 3601-5:2002の改正が検討されており、その内容は詳しく知りませんが、ゴム材料の特性値も規定に入れることを検討しているようです。作成されますと、既に決めましたJIS B 2401-1 Oリングとの関係性が強まり、総合的に判断しなければならないので、今回は見送られたようです。
しかし、将来は整合性をとり、JIS B 2401-5として発行されると見ています。
以上、新JIS B 2401のシリーズを紹介してきました。いずれにしても規格の作成には大変な努力が必要です。
また元となるISO 3601シリーズの歴史もあり、大変長い間に各国の思惑もあり、いまでも完全に十分な規格であると思えない事柄もありながら、これらを踏まえてJISとの整合化を図られた関係者に努力に敬意を表したいと思います。
これらの規格が出来たので、今後は如何に市場にいち早く流通にのせることがシールメーカに課せられる課題です。
常に感じていることですが、日本国内でのISOをJIS化したものに対して、諸外国に比べて導入が遅れている点が気になっています。特にドイツや英国ではいち早く国内の規格化して、かつシールメーカではカタログにそのISOシリーズのシール製品を記載して、流通させていることです。
現在、日本はシールに関するISOの幹事国でありながら(TC131/SC7の幹事国で、幹事と議長)、その点の動きの遅さに苛立ちを感じていています。その一例を言いますと、Uパッキンの規格であるJIS B 8396:2000「油圧‐往復動用ピストン及びロッドシールのハウジング‐寸法及び許容差」を製品化したものは、今時点でも国内のシールメーカからカタログが一切出ていないことです。
確かに、現在の各シールメーカで各社が標準にしているもので、ユーザも満足していることがあるかも知れませんが、これらに関しては各メーカ製品での互換性がない状態であることも事実です。
シールメーカでは初期の投資費用が大きいために、踏み切れない事情もあるでしょう。しかし、今後、グルバール化する世界では後塵を見るような気がします。
規格の話で、大部、逸れましたが、日頃感じていることをついでに書きました。
今後の予定は、
- シール設計に関係する有限要素法の現状
- シール理論(概略)
- 最近のシール関係の文献で分かった内容
など漸次紹介していきたいと思っています。