アスベスト(石綿)のガスケット、まだ使われているのですか??

最終更新日: 公開日: 2023/11


お客様から「このガスケットが欲しいんだけど」と、そのものを渡される際、ときどき、こんなことを言われます。
「こんな品番見たことないんだけど・・・」

そういったガスケットは、基本的に数年間、整備がされていなかった機械の中にあります。

久しぶりに整備するため、機械の中を開けてみたところ、そのガスケットが出てきて、ボロボロになっているので、新しいものに交換しようとお問い合わせをいただきます。

そして、そういった場合のガスケットは、実は、アスベスト(石綿)のものであることが多いのです。
このブログでは現在制限がかかっているアスベストガスケットに関しての見分け方や、ノンアスベスト製品の選定方法をご紹介します。

アスベストとは

アスベストとは、厚生労働省のHPに以下のような記載があります。

「石綿(アスベスト)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。
その繊維が極めて細いため、研磨機、切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹付け石綿などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が 吸入してしまうおそれがあります。以前はビル等の建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていましたが、昭和50年に原則禁止されました。

引用元:アスベスト(石綿)に関するQ&A

アスベスト禁止の背景

アスベストとは前述のように石綿と呼ばれる繊維状鉱物の総称です。
耐火性、断熱性、防音性に優れており、化学薬品にも強く丈夫で劣化しづらいという特性を持ちます。そのため、建材(吹き付け材、保温・断熱材、ストレート材など)、摩擦材(自動車のブレーキライニングやブレーキパッドなど)、シール断熱材(ガスケットなど)といった様々な工業製品に使用されていました。

様々な場所で多用された一方で、以下のような有害性があることも明らかになりました。

  • 飛沫により人体に容易に吸引される
  • アスベスト起因の疾患(石綿肺、肺がん、悪性中皮腫)を発症する
  • 潜伏期間が15~20年と長期間にわたる

また、1972年ILO(国際労働機構)やWHO(世界保健機関)がアスベストの発がん性を認めたことをきっかけに、以下のような規制を経て現在では新たな製造や輸入、使用が禁止されています。

アスベストに関する法律

  • 1975年:特定化学物質等障害予防規制 改正
      ▷含有量5%以上の石綿の吹き付け作業が原則禁止へ
  • 1995年:労働安全衛生法施行令、特定化学物質等障害予防規制 改正
      ▷含有量1%以上の石綿の吹き付け作業が原則禁止へ
  • 2004年:労働安全衛生法施行令 改正
      ▷石綿を含有する建材・摩擦材・接着剤などの製造が原則禁止へ
  • 2006年:労働安全衛生法施行令 改正
      ▷含有率が0.1%を超える石綿の製造・輸入・使用が全面禁止へ

「石綿」はそこにあること自体が直ちに問題なのではなく、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。
(参照:厚生労働省)

建設業労働災害防止協会による石綿含有建材別作業レベル区分

アスベストはレベル1から3に分かれており、後述するアスベスト含有ガスケットはレベル2にあたります。

作業レベル レベル1 レベル2 レベル3
建材の種類 石綿含有吹付け材 石綿含有保温剤、
耐火被覆材、断熱材
その他の石綿含有建材
(成形板等)
発じん性 著しく高い 高い 比較的低い
具体的な必要箇所の例 ① 建築基準法の耐火建築物(3階建以上の鉄筋構造の建築物、床面積の合計が200㎡以上の鉄筋構造の建築物等)などのはり、柱などに、石綿とセメントの合剤を吹付けて所定の被膜を形成させ、耐火被膜用として使われている。昭和38年頃から昭和50年初頭までの建築物に多い。特に柱、エレベータ周りでは、昭和63年頃まで、石綿含有吹付け材が使用されている場合がある。
② ビルの機械室、ボイラ室等の天井、壁またはビル以外の建築物(体育館、講堂、温泉の建物、工場、学校等)の天井、壁、石綿とセメントの合剤を吹き付けて所定の被膜を形成させ、吸音、結露防止(断熱用)として使われている。昭和31年頃から昭和50年初頭までの建築物に多い。
① ボイラ本体及びその配管、空調ダクト等の保温材として、石綿保温材、石綿含有けい酸カルシウム保温材等を張り付けている。
② 建築物の柱、はり、壁等に耐火被覆材として、石綿耐火被覆板、石綿含有けい酸カルシウム板第二種を張り付けている。
③ 断熱材として、屋根用折版裏断熱材、煙突用断熱材を使用している。
① 建築物の天井、壁、床などに石綿含有成形板、ビニル床タイル等を張り付けている。
② 屋根材として石綿スレート等を用いている。
必要な対策 著しく発じん量が多い作業で、作業場所の隔離や高濃度の粉じん量に対応した防じんマスク、保護衣を適切に使用するなど、厳重なばく露防止対策が必要なレベル 比重が小さく、発じんしやすい製品の除去作業であり、レベル1に準じて高いばく露防止対策が必要なレベル 発じん性が比較的低い作業で、破砕、切断等の作業においては発じんを伴うため、湿式作業を原則とし、発じんレベルに応じた防じんマスクを必要とするレベル
作業の種類 石綿含有吹付け材の除去作業 石綿を含有する保温材、断熱材、耐火被覆材等の除去作業 レベル1、レベル2以外の石綿含有建材(例えば成形板など)の除去作業

出展:建設業労働災害防止協会「建築物の解体等工事における石綿粉じんへのばく露防止マニュアル」(平成17年8月)

アスベストガスケットとは

かつては多く使用されていたアスベストのガスケットは、性能が非常に高く、細かな使用条件(温度、圧力、流体など)を気にしなくても使用できるほどで、ダクトや様々な場所でよく使われていました。

冒頭に記載したようにお客様から今流通していないガスケットを渡され、「これはアスベストですね」とお伝えすると、お客様からこう言われます。

「アスベストだったら、もう使ったらダメだよね、相当品を手配してほしいんだけど、お願いできますか?」と。

先程も書きましたが、アスベストの性能はものすごく高く、ハイスペックで、実はこれと同等性能のガスケットは存在しません。
ノンアスベストのガスケットが主流となっている今、例えば「バルカー1500のノンアスガスケットは○○番」と提案できれば良いのですが、なかなか難しく、
温度や流体など、その条件をお伺いし、そこで使える最適なものを提案するという形になっています。

ちなみに「アスベストのフランジパッキンはいつまで使えるのか?」という質問をよくいただくのですが、置き換えの期限はございません。
また、使用中の製品についてはアスベストをゴムや樹脂で固定しているため、粉塵がでないため問題ありません。
その他、「アスベストのフランジパッキンはいつから使用禁止になるのか?」という質問もいただくのですが、
労働安全衛生法施行令の改正により、平成18年9月1日から禁止となりました。
つまり、記載したように、従来使用していたアスベストパッキンを再度購入ということはできませんのでご注意ください。

また、ガスケットメインで記載をしていますが、対象となるのはガスケットだけではなく、グランドパッキンなども対象になります。

アスベストガスケット(パッキン)の見分け方

ガスケットは表面に品番のプリントがされています。その品番を確認するとアスベスト使用のガスケットかどうか判断することが可能です。特に長年あまりメンテナンスをされずに使用されることも多い、配管パッキン(正しくは配管ガスケット)では、何十年ぶりに交換しようとすると「アスベストガスケットだった」ということがあります。
アスベストガスケットの型番は、株式会社バルカー製のジョイントシートV#1500、うず巻形ガスケットV#596、メタルジャケットV#520や、ニチアス株式会社製のジョイントシートT#1000、うず巻形ガスケットT#1838-R、メタルジャケットT#1840などが代表的な対象品番です。

日本のガスケットメーカー各社のHPには過去に販売されていたアスベスト含有製品の品番が記載されていますので、もし機械整備時などで見慣れない品番が出てきた場合は、下記URLよりアスベスト含有製品か否かをご確認ください。

御社で現状お使いの型番があれば、石綿該当となりますので、同一製品の再購入は出来ません。

もし、アスベスト含有製品が出てきた場合、環境省石綿含有廃棄物等処理マニュアルに沿って、廃棄処分してください。

なおゴムシートから加工したものを、ガスケットとして使用されていることがありますが基本的にはゴム単体のガスケットはアスベスト含有はありません。
※建築用で継ぎ目や隙間に使用されるペースト状のシーリング材には、1成分形ブチルゴム系と、油性コーキング材には、含有していた過去があるようですが、弊社が扱うガスケットとは少し別物になります。

アスベストパッキン後継品ノンアスベストパッキンの選定方法

もしアスベスト含有製品を使用されている場合は使用していたアスベスト製品の品番に加え、以下の情報をご教示ください。

  1. 温度
  2. 圧力
  3. 流体
  4. サイズ
  5. 使用機器、使用場所

こちらでゴムパッキンや、ノンアスベストジョイントシート等、安定供給できる相当品を選定して連絡させていただきます。

コタニが販売するガスケットメーカー“DONIT TESNIT”

ノンアスベスト製品のおすすめとして、ノンアスベストシートの開発にいち早く取り組み、耐熱性を改良した新製品も開発している、DONIT TESNIT社について詳しく紹介します。

スロベニアのガスケットメーカーDONITとは

DONITは中央ヨーロッパの国スロベニアのメドヴォデ市に本社を構える固定用シールのすべてのニーズに答えるガスケット専門メーカーです。DONIT社製品の製造は全て本社があるスロベニアで行われており、ガスケットを1つの工場で全て生産するヨーロッパ最大の単一拠点生産を行っています。シールの専門商社コタニは日本総代理店としてDONIT TESNIT製品を日本国内のお客様に販売しています。

DVGW(独ガス水道協会)やWRAS(英国水道規格)、ABS(米国船級協会)など各業界から求められる規格・認証を取得し、高品質でコストパフォーマンスが優れたガスケットを世界70か国以上、500社以上のお客様に供給しています。供給先は食品、ガス、水道、化学薬品、造船、発電所など多岐に渡ります。

様々な導入実績からのノウハウが蓄積されており、正しいガスケット取付に関する相談、顧客のシールソリューションに合わせた試験方法の設計、トラブル解決提案なども行っています。

DONIT社沿革】
1946年 設立
1982年 ノンアスベストガスケットシートの製造開始
2000年 アスベストの製造を中止
2012年 中国に子会社を設立
2015年 米国に子会社を設立
2020年 ドイツに子会社を設立、ガスケットのオンライン販売開始
※コタニは1997年よりDONIT社の日本総代理店となりました。

他ガスケットメーカーとの違い

  1. 環境配慮(エコバディス)
  2. Ecovadis(エコバディス)とは、フランスにある企業サステナビリティの評価機関です。
    日経ESG Specialの特集ページでは、以下のように説明されています。

    フランスのEcoVadis(エコバディス)は世界160カ国、9万5000社以上の企業に評価を実施するサステナビリティ・サプライチェーンの評価会社。
    「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4分野で企業のCSR方針や施策、業績を評価する。
    今や企業経営にサステナビリティは必要不可欠な要素であり、企業のブランド力向上、資金調達コストの削減、リスク管理などの観点から避けて通れない重要課題となっている。

    ESG経営の重要性が高まる昨今において、より普遍的な判断価値の高い組織による評価が、ビジネスパートナーからの信頼に直結すると言っても過言ではありません。
    数多くの外資系企業が登録しており、登録済みの日本企業は僅かで、まだまだ登録が遅れているのが現状です。
    現に、日本企業は全体の約4%程度に留まっていると言われています。

    DONIT TESNIT社は、エコバディスのCSR評価における「Ecovadis Silver Medal」を受賞しており、製造工程において様々な環境配慮を講じた企業です。
    例えば工場付近にも住居者が多く、また工場の真横に流れる川では魚が泳いでおり、釣り人が多いくらい、クリーンな排水を心掛けています。
    またアスベストが多用されていた1982年時点で、世界初のノンアスベストシートガスケットを製造しており、環境へ配慮する社風が長期間にわたって守られています。

    「海外の取引先が、エコバディスからの評価を受けた製品で指定している。」というケースがあった際は、是非弊社が総代理店を務めますのDONIT TESNIT製品をご検討ください。

一押し商品BA-U

弊社がおすすめしているシートガスケット『BA-U』について、紹介いたします。

BA-UはDONIT社の汎用ガスケットで、ガス及び飲料水供給用、食品業界、造船業界など幅広い分野で使用できるよう設計されています。

  1. 海外規格
  2. BA-Uが準拠している、海外規格について紹介いたします。
    1材質でありながら、非常に多種多様な海外規格に準拠していることが分かります。

  • ABS[アメリカ・船級協会]
  • AGA AS 4623[オーストラリア・ガス協会]
  • BAM(Oxygen)[連邦材料試験研究所]
  • DNV GL[ノルウェー・船級協会]
  • DVGW DIN 30653[ドイツ・ガス水道協会]
  • DVGW DIN 3535-6[ドイツ・ガス水道協会]
  • DVGW W270[ドイツ・ガス水道協会 材料の飲料水用認定]
  • EC 1935/2004[欧州における食品接触材規則]
  • ELL[DVGW(ドイツ・ガス水道協会)水技術センター]
  • SVGW DIN 3535-6[スイス・ガス水道協会]
  • TA Luft(VDI 2440)[ドイツ・大気汚染防止の技術指針]
  • WRAS[イギリス・水道規格]
  1. 国内実績
  2. 弊社から国内で販売実績のある、お客様の業界を紹介いたします。

  • 衛生陶器(洗面器)
  • ブロワーメーカー
  • エネルギー
  • 鉄鋼・製鉄
  • 鉄道

BA-Uの詳しい製品情報は以下をご確認ください。

まとめ

昔に入れたアスベストのガスケットが、そのまま入っているという工場さんもまだまだ多いかと思います。そのまま使用していただいて特別問題はありませんが、気持ちがいいものではないかもしれません。

気になる方は、お早めに切り替えられることをおすすめいたします。

また、ノンアスベストシートに特化したDONIT TESNIT社の紹介もさせていただきました。各使用条件において、どのガスケットがふさわしいのか分からないという場合は、弊社に問合せいただければ選定いたします。

その他にも、ガスケットのことで何か気になることがありましたら、私までお気軽にお問い合わせいただければと思います。お待ちしております!

 

 

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