水銀灯とメタルハライドランプの違い

最終更新日: 公開日: 2023/10

水銀灯とメタルハライドランプは見た目的にはあまり差がなく、区別するのが難しい器具です。
またメタルハライドランプは水銀灯の一種です。
大きな括りでは同じランプなのですが、水俣条約の規制対象になる/ならないも違ってきます。

HIDランプとは

水銀灯とメタルハライドランプの紹介をする前にHIDランプについて紹介します。

HIDはHigh Intensity Discharge Lampの略で日本語では高輝度放電ランプとなります。
発光原理は蛍光灯と同様で電極から放出される電子が水銀原子と衝突して光を放出します。
ランプの種類によって封入ガスや構成材料、発光物質が異なり、この違いによって特長にも差があります。
光が強く広範囲を照らせることから天井高5m以上の工場倉庫、体育館など使用されています。

このHIDランプ水銀灯ナトリウムランプ、メタルハライドランプ、セラミックメタルハライドランプ、マルチハロゲンランプなどと分けられます。
HIDランプ水銀灯の違いを聞かれることもありますが、上記の通り水銀灯はHIDランプの一種です。

水銀灯とは

高圧水銀ランプは工場倉庫で多く使用されていましたが、
水俣条約の対象となったことや省エネを求めてLED無電極ランプなどへの交換が進んでいます。

発光管は高温高圧に耐える透明石英ガラスが使われておりアルゴンが封入されています。
演色性がRa40ほどと悪く、自然光下と見え方が異なり、光源寿命は12,000時間ほどです。

型番だと水銀灯(水銀燈)はHFと表記されており、規制対象になっている可能性が高いため一度メーカーに問合せされたほうが良いです。

水銀灯と蛍光灯の違い

いずれも有名な照明で、この2種類の違いについてご質問いただくことがありますので、併せて紹介させていただきます。
水銀灯と蛍光灯の違いは、発光原理や推奨設置高さなどです。

  • 発光原理
  • 蛍光灯⇒ランプ端の電極(フィラメント)から電子を発し、衝突した水銀原子により紫外線が発生。蛍光管内の蛍光体と紫外線により、発光する。
    水銀灯⇒蛍光灯と同様ですが、水銀原子の密度が高い。蛍光灯で照度を出せない条件であっても、水銀灯であれば照度確保できる条件がある。

  • 推奨設置高さ
  • 蛍光灯⇒~3m
    水銀灯⇒5m~15m

メタルハライドランプ(メタハラ)とは

高圧水銀灯の演色性と発光効率改善のために開発されたのが、メタルハライドランプです。
よって水銀灯と比較したときのメタルハライドランプの特徴は、
Ra70ほどの高演色性、100lm/Wほどに改善された発光効率の良さ(=省エネになる)という点が挙げられます。

このランプにも水銀は使われていますが水俣条約の規制対象にはなっていません。
発光管は水銀灯と同様の石英ガラスを使用しており金属ハロゲン化物を添加しています。

よく「メタハラ」「メタハラランプ」などと省略して呼ばれ、型番ではMFと表記されています。
※フィリップス(philips)製メタルハライドランプの型番はCDM、
HITACHI(株式会社日立製作所)製と三菱電機株式会社製メタルハライドランプの型番はHQIと表記されています。

セラミックメタルハライドランプ(セラメタ)とは

メタハラの寿命や発光効率改善のために開発されたのがセラミックメタルハライドランプです。
このランプにも発光原理上水銀が使用されていますが、
水俣条約の規制対象にはなっていませんので生産終了対象品ではありません。

発光管の材質がガラスではなくセラミックにしていることで発光管の管内を高温にし発光効率が高くなっています。
よく「セラメタ」「セラメタランプ」と省略して呼ばれています。

水銀灯とメタルハライドランプの違いについて

発光効率

水銀灯とメタルハライドランプは同じ400Wの消費電力でも発光効率が異なります。水銀灯は400Wで全光束は22,000lmほどですがメタルハライドランプは40,000lmほどです。水銀灯の発光効率は55lm/Wに対し、メタルハライドランプは100lm/Wになります(無電極ランプは90lm/W)。発光効率が高いほうが省エネとなりますので水銀灯よりもメタルハライドランプのほうが省エネできます。)

光束維持率

先ほど発光効率はメタルハライドランプが良いと述べました。
数値的にも効率的にも同じ400Wであればメタルハライドランプのほうが明るいと感じると思いますが、それは設置してからの時間によります。
メタルハライドランプは高速維持率が低く、2,000時間使用で80%の光束となり、6,000時間使用で50%ほどに光束が落ちます。
水銀灯は12,000時間使用で80%ほどの光束なりますので以下のことが言えます。

6,000時間使用時のメタハラ400W:40,000lmx50%=20,000lm

6,000時間使用時の水銀灯400W:22,000lmx95%=20,900lm

よってメタハラは使用すればするほど光束値が落ちてきますので、設置した当初よりも暗くなっていきます。

演色性

メタルハライドランプの説明でも記載しましたように水銀灯の演色性の悪さをメタルハライドランプは改善しています。

水銀灯がRa40ほどなのに対してメタルハライドランプはRa70ほどです。
水銀灯を使用してすこし緑がかったような印象の工場はメタハラに変更すると白っぽく感じます。
また太陽光(Ra100)に数値が近づきますので、色の見え方はメタハラのほうが自然に見えます。

光源寿命

水銀灯とメタルハライドランプは共に定格寿命は12,000時間となります(※無電極ランプは60,000~100,000時間、LEDは40,000~60,000時間の寿命になります)。
24時間365日使用で1.5か月ほど使用できることとなります。

水銀灯やメタルハライドランプなどの放電灯は長時間製造している同一形式のランプを5.5時間点灯し0.5時間消灯する連続繰り返し試験において、多数のランプが点灯しなくなるまでの点灯時間の平均値で決められています。

つまり不点灯になるまでの時間となりますが、上記で記載した光束維持率を考えるとメタルハライドランプは6,000時間で照度が半減してしまいます。

LED無電極ランプ全光束が点灯初期に計測した値の70%に下がるまでの総点灯時間を定格寿命と定められていますので、メタハラの光源寿命は6,000時間といってもいいかもしれませんね。

見た目

水銀灯とメタルハライドランプの違いについてここまで記載しましたが、見た目は正直違いがほとんどありません。
次の記事で見分け方について記載いたしますが、見分け方を知っておかないと見た目では違いを見極めるのが難しいです。
点灯していると色の見え方で水銀灯かな?と予測できたりもしますが、点灯していない状態だとほぼ同じです。

また水銀灯とメタルハライドランプはセードの口金部分の互換性があるため、工場を建てた当初は水銀灯だったのに、
いつの間にか電球はメタハラに代わっていたということもよく見受けられます。

安定器

水銀灯とメタルハライドランプは別物ですので、それぞれに対応した安定器が必要となります。
バラストレス水銀灯という安定器不要の水銀灯もありますが、
メタルハライドランプには安定器不要の仕様はありません。
ちなみにバラストレス水銀灯の見分け方は、照明から配線をたどって安定器の有無を確認してください
安定器無しに直接電源につなぐと、すぐにランプが破損したり、不点灯などの不具合が起こります。
「安定器一体型器具」や「安定器別置き型器具」という、器具本体に安定器を内蔵している照明器具はありますが、
メタルハライドランプや、セラミックミタルハライドランプには安定器の要らないランプはありません。

注意点

水銀灯・メタルハライドランプのどちらにも該当しますが、点灯中及び消灯後はランプが熱いため、十分冷却したいただくことをおすすめいたします。

しかし、メタルハライドランプに関しては、基本的に照射角度が指定されています。
見分け方としては、型式末尾にあるアルファベットにより判別することが可能です。
具体的に、岩崎電気㈱の『よくある質問(FAQ)』で以下のように説明されています。

BUD:垂直点灯形
BU:口金上方点灯形(ランプ下向き)
BD:口金下方点灯形(ランプ上向き)
BUH:口金上方~水平点灯形
U:任意点灯形

尚、今回紹介した内容は、あくまで一例です。
設置されている照明器具によって注意事項が異なりますので、仕様書の確認をおすすめします。

水銀灯とメタルハライドランプの見分け方

電球だけ見るとほとんど見た目が変わらないのでお客様の中には見分けがつかないという方もおられます。「見た目では判断が付かないので、水俣条約の対象になっているか分からない」「設置した当初の明るさにしたいけど、水銀灯とメタハラどちらか分からないので、求めている明るさが算出できない」などお客様から連絡いただくこともあります。ここではそんなお客様向けに水銀灯とメタハラの見分け方を解説します。

型番を調べる

現在購入している電球の型番や安定器に記載してある型番をご確認ください。
HFではじまっていれば規制対象となる水銀灯、MFではじまっていればメタルハライドランプになります。
型番をHPで検索すると各種メーカーページにも規制対象か記載されていますのでご確認ください。

写真撮影する

水銀灯は直接見ると白っぽく見えても、カメラを通じて写真など撮ると緑色に写ります。

メタルハライドランプは白色で写りますので、写真を撮って緑色であれば水銀灯の可能性が高いです。しかし水銀灯も白色に写る品番もあるようですので注意が必要です。

色を確認する

水銀灯とメタルハライドランプの違いでも記載したように、
メタルハライドランプは水銀灯の演色性を改善したランプになります。

感覚的なものもあり難しいかもしれませんが、色を太陽光下とランプ光下で見比べてみてください。
全く違う見え方(緑がかったように見える)だと水銀灯の可能性が高いです。

水銀灯やメタルハライドランプの交換として利用される無電極ランプ

長年、体育館、工場倉庫などあらゆる箇所で使用されてきたHIDランプですが、近年は水俣条約の改定を背景とした市場規模縮小や省エネの観点から、各メーカーよりHIDランプの生産終了が発表されています。
・岩崎電気株式会社:

・パナソニックホールディングス株式会社:

ここからは水銀灯やメタルハライドランプから置換できる無電極ランプの交換を提案しております。

無電極ランプとは

無電極ランプも水銀灯やメタルハライドランプと同じHIDランプになります。

発光原理は蛍光灯と同様で電極から放出される電子が水銀原子と衝突して光を放出します。
ただしフィラメントのような消耗する備品がないので非常に定命という特徴があります。

ここからは水銀灯とメタルハライドランプの違いで記載した発光効率、光束維持率、演色性の項目で無電極ランプについて説明します。

無電極ランプの発光効率

無電極ランプの発光効率は90lm/Wになります。200Wタイプで18,000lmです。
上記の発光効率を確認すると水銀灯が55lm/W、メタルハライドランプは100lm/Wになるのでこの数値だけ確認すると

水銀灯<無電極ランプ<メタルハライドランプ

となります。

ただしメタルハライドランプ400Wに対して無電極ランプは250W~300Wで同照度が実現できると説明します。
これは次に説明する光束維持率が大きく影響しています。

無電極ランプの光束維持率

無電極ランプは光束維持率が非常に良い照明です。無電極ランプは常時点灯し、100,000万時間以上経過しても 約70%以上の光束量を維持します。上記で以下のような計算式を記載しました。

6,000時間使用時のメタハラ400W:40,000lmx50%=20,000lm

6,000時間使用時の水銀灯400W:22,000lmx95%=20,900lm

これを発光効率に置き換えると以下になります。

6,000時間使用時のメタハラ400W:40,000lmx50%=20,000lm÷400W=50lm/W

6,000時間使用時の水銀灯400W:22,000lmx95%=20,900lm÷400=52.25lm/W

無電極ランプは6,000時間の使用では数%しか光束は落ちません。
メタハラを交換検討する際は6,000時間以上使用されていることがほどんどですので、
無電極ランプのほうが明るく省エネになり、
かつ明るさが60,000~100,000時間使用してようやく70%ほど落ちますので、
導入したての明るさを長く維持できる照明と言えます。

演色性

無電極ランプは演色性も水銀灯やメタルハライドランプより優れています。
無電極ランプの演色性はRa80です。
青・緑・赤できれいな白色を表現しており、色を重要視するような塗装エリアや検査エリアでも採用されています。

まとめ

現地調査させていただいた際、よく水銀灯とメタハラどちらか分からないであったり、
違いは何なのかと質問を受けておりまとめました。

水俣条約の規制対象になるかならないかも大きく違いますし、それぞれのメリットやデメリットがございます。

もし自社の照明が何か分からないであったり、交換に迷われましたらご相談ください。

【執筆者:S.S.(一般社団法人照明学会 照明士)】

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