オイルシールとはどのようなパッキンか

最終更新日: 公開日: 2024/05

オイルシールはシール材の中で、回転用パッキンとして使用されます。オイルシールという名の通りオイルをシールする役割を持ち合わせており、その技術は1900年代から世界に広まっています。自動車生産大国の日本としては、数多く消費されているオイルシールについてご紹介します。

オイルシールとは

オイルシールは回転用シールとして代表的なシールです。
リップと呼ばれる軸との接触箇所で油膜を形成し、機器内部から密封流体の漏れを防ぐと同時に、外部からのほこりの侵入を防ぐ構造・仕組みを有します。
国内ではオイルシールの名前は有名ですが、海外では"oil seal"の表記の他に、"rotary shaft seal"や"lip seal" とも呼ばれています。

オイルシールの国際規格としてISO6194があり、国内規格としてはJIS B 2402-1~4があります。

オイルシールの寸法及び公差

JISによるとオイルシールの適用範囲として以下の表記があります。

この規格は,軸径6〜480 mm及びハウジング内径16〜530 mmの範囲に適合した,ばね入り回転軸用オイルシール(以下,オイルシールという。)の寸法及び公差について規定する。 オイルシールは,ゲージ圧0〜30 kPaの低圧条件で使用し,構造によって6タイプに分類する。

図1 オイルシールの構造区分例

構造的にはゴムのシール部分と、ばねと金属の枠があるというものがオイルシールです。
シールの密封機構はゴムの先端のリップ状のもので、はり代を与え、ばねで圧縮するようになっています。
ハウジングには固定用の若干のつぶし代を与え、金属製のリテーナーで抑える構造になります。
その状態の装着部の箇所を図2の断面図に示します。


図2 オイルシール装着の状態(NOK社の技術資料から)

この図では右側が油側で、左側が大気側です。シールリップに、はり代が分かりますと同時にばねがその部分を抑えているのが分かります。またリップ先端での油膜がある接触部分が明確です。
この油膜の形成こそが、オイルシールが密封できる仕込み・構造といえます。

オイルシール関連用語

JIS規格を見ていくと第2部ではオイルシールの用語について規定しています。タイプ、部位やはめあい、外観欠陥、取付、性能試験など内容は非常にきめ細かくあらゆる点を網羅しています。
用語検索もできるようになっていますので、何か分からない単語などがあれば、一度見られることをオススメします。

オイルシールの保管、取扱い及び取付

オイルシールの保管場所は、温度30℃以下、平均相対湿度40~70%と規定されており、積み重ねは避けることが重要であるとJIS規格で説明されています。
保管期限も参考に記載されていますので紹介します。
FKMが10年で、他のゴム(ACM,NBR,HNBR)は7年となっています。VMQが記載されていませんが、常識的に判断すればFKMと同様と思われます。

オイルシールの取付は、シールリップには適切で正常な潤滑油を塗布し、またダストシール付きオイルシールには、グリースをシールリップ間に充填した上で取付を行います。
取付けジグの使用も規定されており以下の図はJISに記載されている代表的なものです。

図3オイルシールの取付け(JIS規格から)

オイルシールが使用される場所

日常でオイルシールを目にすることはほぼありませんが、回転や往復運動を伴う装置の軸部分に使用されています。簡単にオイルシールが使用されている機械を紹介します。

  • 自動車関連
    エンジンやトランスミッションなど自動車における重要な部品にオイルシールは使用されています。車種やエンジンの種類などで異なりますが、1台の自動車で30~50種類のオイルシールが搭載されていると言われています。
  • 産業機械
    ポンプ、減速機、コンプレッサー、ベルトコンベヤーなど生産設備に欠かせない装置でもオイルシールは使われています。
  • その他
    建設や農業機械のトラクターやブルドーザー、家電の洗濯機やエアコンなど私たちが日常生活で使用するものにもオイルシールは使われています。

オイルシールの比較

オイルシールは合成ゴム(NBRやFKM)が使用されることがほとんどですが、ゴムでは使用できない場所では樹脂製のオイルシールが使用されます。樹脂製オイルシールとゴム製オイルシール、そしてオイルシール同様回転軸で使用され、より要求の厳しい場所で使用されるメカニカルシールを比較しました。

      PTFE製オイルシール ゴム製オイルシール メカニカルシール
耐熱性
耐寒性
耐油性
耐薬品性
耐久性
高速性能
耐圧性能
耐異物性
偏心追従性
組み付け性
摺動発熱
シール価格
相手部価格

 オイルシールを用いた装置の設計時など、何を重視するかで選択肢が変わってくるかと思いますので、参考にしてください。

オイルシールのメーカーについて

ここからは、オイルシールの国内メーカーと海外メーカーをご紹介します。数多く存在しますので代表的なメーカーのみ記載します。

日本のオイルシールメーカー

まずは、日本国内にあるオイルシールメーカーです。

  • NOK
  • NOK株式会社は日本を代表するオイルシールのメーカーです。自動車・産業機械・電子部品 など幅広い分野でNOK製のシールは使用されており、日本国内に限らずアメリカ、中国、メキシコなどあらゆる国で流通しています。

  • 武蔵オイルシール
  • 武蔵オイルシール工業株式会社は、日本国内でオイルシールを製造する専門メーカーの一つです。自動車や二輪車、産業機械メーカーにシール製品を供給しています。

  • 東洋オイルシール
  • 株式会社東洋オイルシールは、日本のオイルシールメーカーです。外径1600φまで製造できる大口径品や食品や半導体向けの白色系オイルシールの製造を行っています。

世界のオイルシールメーカー

続いて世界の有名オイルシールメーカーを見ていきましょう。

  • Chicago Rawhide (SKF) 
  • Chicago Rawhideは、アメリカのオイルシールメーカーで現在はスウェーデンのベアリングメーカーであるSKF社が展開しています。

  • Garlock
  • Garlock はアメリカに本社を置くオイルシールメーカーです。

  • Freudenberg Sealing Technologies
  • Freudenberg Sealing Technologiesはドイツに本社を置く、オイルシールメーカーです。NOKとの技術提携があります。

    韓国製鉄業界のシールはハンソンテック

    オイルシールメーカーは世界に数百社以上存在しています。弊社は国内オイルシールメーカーの製品はもちろん、韓国ハンソンテック社の製品も扱いを始めました。

     

    ハンソンテックとは

    ハンソンテックは韓国釜山にあるシールメーカーで、1978年に設立以来、韓国内シール産業をリードしている企業です。ハンソンテックは漢字で表記すると「韓星」となり、“韓国の星=シール業界で一等企業になる”という願いが込められています。以下のような特徴があります。

     

    ハンソンテックの特徴1:57,000SETの金型保有

     

    素材別特性を把握し、素材別に金型を保有しているため正確なサイズの製品を提供可能です。またあらゆる種類の金型を保有しているため、金型投資不要で商品の提供ができます。

     

    ハンソンテックの特徴2:2500φの大型シール製造可能

    シール類は大きくなるほど製造が難しくなりますが、ハンソンテックには作業工程、金型製作などに大型シールを製作するためのノウハウがあるため、大型シールでも高品質な製品を提供可能です。

    ハンソンテックの特徴3:受入検査なしの信頼された品質

     

    韓国の鉄鋼生産量は世界で6位(2023年度)で、その生産引っ張るポスコおよび現代製鉄に、ハンソンテックは受入検査なしで90年代より納品しています。受入検査なしというのは、品質の信頼を得ている証です。またポスコおよび現代製鉄をはじめとする韓国内の製鉄会社には、メンテンナンス用シール材の占有率No.1を誇ります。

     

    ハンソンテック社の実績

    産業群 会社名 納品実績内容
    製鉄 ポスコ(高炉) 再圧延用ドラムのギアボックス用シール
    防皺ロールのベアリング用シール
    酸洗・熱間圧延コイルのブラシロール用シール
    熱間圧延ブラインドロール用シール
    PCI(高炉用連続微粉炭吹き込み装置)のローラタイヤ・エアコンポ・ミルローラータイヤ用シール
    ポスコ(連鋳) 連鋳機ロータリージョイント用シール
    急速冷却装置用シール
    銅板鋳造ライン用シール
    連鋳電磁攪拌インロール用シール
    高圧油圧配管用シール
    ブルームトーチカッティングマシン用シール
    現代製鉄 圧延ロールチョーク用シール
    連鋳ロール用シール
    東部製鉄 圧延ロールチョーク用シール
    連鋳ロール用シール
    ハンスコ ロールチョーク用シール
    造船 大宇造船海洋 ブロックリフター、プロペララダーシール、油圧装備シール、ゴライアスクレーン用緩衝材
    サムスン重工業 シリンダーパッキン
    航空 大韓航空 海外油圧装備シールの国産化、航空機部品製装用装備シール類開発
    熱圧器ドアシールの国産化、オートクレーブ(熱圧器)ドアシールの開発
    海外機械部品の国産化、輸入装備機械部品の国産化

     

    ハンソンテック取扱い製品

    ハンソンテックはOリング、オイルシールなどシール全般を扱う企業です。
    Oリングに関しては全世界すべての規格に対応する準備が整っています。

    • JIS B 2401:日本
    • AS568:アメリカ
    • BS 1806/BS 4518:イギリス
    • SMS 1586:スウェーデン
    • DIN 3771:ドイツ
    • NF T 47-501:フランス

    ハンソンテック社および他オイルシールメーカーの型番対照表

     各メーカーによって形状は同じでもメーカー独自の型番で管理されていますので、もし現在使用の型番と同等品をお探しの場合は以下の対照表を参考にしてください。代表品番のみの表記となります。

    ハンソンテック HTC HSC HTB HSB HVC HVB
    NOK TC SC TB SB VC VB
    武蔵オイルシール UE AD UD AC KE KD
    東洋オイルシール TO SO TM SM VO VM
    Chicago Rawhide (SKF) HMSA7 HMS4 CRWA1 CRW1 TYPE HM14
    Garlock 94 92 78 76 91 71
    Freudenberg  BASL BA B1SL B1 BAOF B1OF

    最後に

    ここまでお読みいただき、ありがとうございました。とても身近な製品に使われているオイルシールは私たちの生活に欠かせない部品かもしれません。弊社は高品質で安価なハンソンテック社のオイルシールを扱い始めたところですが、現状のオイルシールのコストダウンを検討したい、新規品で使用するオイルシールを選定中、使用していた品番が廃番となったなどございましたら、ぜひお問い合わせください。

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