耐薬品性のシールについて

最終更新日: 公開日: 2023/12

 

少し横断的に耐薬品性のシールとの観点で説明いたします。
まず、各種のシールがありますが、名称から耐薬品性ということで、言われているシールは少ないと思います。それらの展開は後程として、材料面で見れば、あります。

 

代表的のものにはフッ素ゴム(FKM)があります。またパーフロロエラストマー(FFKM)やエチレンプロピレンゴム(EPDM)も加わります。また樹脂の仲間ですが、四ふっ化エチレン樹脂(PTFE)などは代表的なものです。

 

それらの総合的に見れば、順位はPTFE,FFKM,FKM,EPDMと考えても良いかも知れません。しかし、実際面で見れば、やはり全ての薬品に耐性があるものは、無く、長所も短所もあるのは、事実です。

 

例えば、良く言われている耐薬品性のあるFKMでもアルカリ性薬品に耐性が無いこともあり、またEPDMは逆にアルカリ性に対して耐性がありますが、耐酸性には問題があります。
しかし、FFKMでも問題のある薬品もあるので、適材適所に応じた対応が求められます。これらについては以前に説明いたしましたので、参照ください。

 

では、代表的な耐薬品性をタイトルしているシール例を見ていきます。
それは、PTFE(他の同じ系統のFEP,PFAなど含め)を基本的にメインとしたシールになります。

  • (1) Oリングがあります。大昔ではPTFE製のOリングがありましたが、現在ではその材料の持つ欠点であるクリープ特性で寿命の観点で、使用されなくなりました。
    いまでも時々その名残があるのも事実です。
    なお、このOリングにPTFEでコーティングしたものは現在でも使用されています。目的は装着性をより容易にする目的ですが、基本的には薄い皮膜のために耐薬品性はあまりありません。かつ運動用には向かないこともあります。
  • (2) 樹脂被覆Oリングがあります。

    図1 樹脂被覆Oリング
    図1に示すように全体を樹脂(この場合の樹脂はFEP,PFA)でゴムを被覆したものです。 実際には流体と接するのはこの被覆した樹脂であり、この樹脂に耐える全てのものに使用できることになります。使用されている内部のゴム材料は、FKM,MVQの2種類であり、あまり耐薬品性を配慮する必要がないのですが、使用される温度で低温の場合にはMVQとなりますが、通常はFKMが一般です。

 

使用上の問題的は、あまり運動用には適していないことです。全く使用不可ではありませんが、もしどうしても使用したい場合には寿命を確認してから使用することをお勧めします。
時々のこのシールを真空用に使用する場合にもシール性に問題があるので、注意が必要です。
なお、つぶし力に関しては、硬さ90のゴム程度と見ても間違いありません。
コスト的な位置付けですが、耐薬品性でFFKMを使用するよりも低コストのメリットがあります。
ただし、通常のゴムOリングよりは当然高コストですが、被覆材料の選別は、高温用がPFAで、低温用がFEP、一般的には耐薬品性は大差ありません。

使用方法は、通常のOリングと同様です。なお、あまりデータが無いのですが、高圧の場合、複合品のため、破損の恐れもあるので、7MPa程度が限界でしょう。

  • (3) ばね入り樹脂Uリング
    この樹脂がPTFEです。

    図2 ばね入り樹脂Uリングの外観(三菱電線工業の技術資料から抜粋)

    図2に示すようにU字型をしたPTFEのリングとステンレス鋼のスプリング(ばね)を装着した複合シールです。
    ご存知だと思いますが、このシールは一方向性のシールでOリングのように両方向性のあるシールとは異なる点に注意ください。
    メインの材料は、PTFEですので、耐薬品性には全く問題はありません。
    従来の欠陥であるクリープによる問題はばねを使用することに解決出きる訳です。
    用途的には、広範囲にわたり使用が可能です。温度的には、極低温から250℃まで使用可能です。
    ただ、前に説明したように一方向性のシールである点に注意すべきです。
    (1) 樹脂被覆Oリングではできるだけ避けてほしい言った真空用途でもこのシールは使用可能ですし、運動用にも使用可能です。
    なお、若干の問題点は相手ハウジングに装着する場合には、ゴムシールのように引き伸ばしして装着することは困難である点です。
    できる限り円筒面での使用では、ハウジングを分割にすることが望ましいです。(治具など使用することにより、一体ハウジングに装着することも実際には行われていますが、ある程度の技術や慣れが必要です。
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