ガスケットとは

最終更新日: 公開日: 2023/11

シールは運動用シールのパッキンと、固定用シールのガスケットに大別されます。この記事では、特性や種類、関連部材であるフランジなどガスケットに関する基本の基をまとめています。

シールの役目

ガスケットについて知る前に、「シール」について知る必要があります。
 
JIS(日本産業規格) B 0116によるとシールの定義について、下記の記載があります。

流体の漏れまたは外部からの異物の侵入を防止するために用いる装置の総称

 
例えば配管と配管の接続部など、流体が漏れてしまう箇所の密封装置としての役割を果たしています。
一部シール材を除き、漏れゼロを要求されることが基本項目となります。

 

ガスケットとは

それでは固定用途のガスケットについて、詳しくみていきたいと思います。
 
ガスケットはボルトや専用器具にしっかり固定されて、気密性や液密性を保つ役割があります。
 
一口に「ガスケット」といっても様々な材質があります。
 
以前は、アスベスト(石綿)を問答無用で材質選定しても、
生産稼働上に問題無く使用できたケースがほとんどでした。
 
というのも、アスベストは耐熱性耐薬品性/耐摩耗性/絶縁性など、
シール材に要求される項目を十分に満たすことができる材質だったからです。
 
しかし、人体に深刻な健康被害が及ぶことが原因で、
平成18年9月より重量0.1%以上の含有製品の製造など禁止されました。
 
現代ではアスベストには代替材質がないため、様々な材質から適切な選定を求められます。

ガスケットに必要な特性

ガスケットに必要な特性は主に5つあります。
1. 圧縮復元性
2. 耐薬品性
3. 強度
4. 耐熱性
5. 応力緩和特性

それぞれについて詳しくご説明します。

ガスケットに必要な特性1.圧縮復元性

圧縮復元性とはガスケットが圧力を受けた時に圧縮され,圧力を除いた時に戻る性質のことを指します。圧縮性はガスケットの取付け面(フランジ)のうねりや凹凸に良くなじんで、密着性を補う重要な性質です。復元性とは、フランジの動きに対し元に戻ろうとする力により締付力を保持することに必要な性質です。ガスケットのシール性は圧縮・復元性の良否に影響を受けるといえます。

ガスケットに必要な特性2.耐薬品性

使用する流体に対しての耐薬品性がない素材を使用してしまうと、ガスケットの構成材料が劣化しシール機能を維持できなくなる可能性があります。耐薬品性がないと、浸透漏洩にもつながります。浸透漏洩とは、密封流体がガスケット等の材料の中を通り抜けてしまうことによる漏れを指します。

ガスケットに必要な特性3.強度

ガスケットには内圧の作用に抵抗する機械的強度が必要です。ガス圧、水圧、油圧などの使用環境によってガスケットの耐圧性を維持するために必要な性質であり、特に高圧の流体をシール(密封)する際に欠かせないものです。

ガスケットに必要な特性4.耐熱性

熱が加わり酸化による分解や硬化、軟化が起きてしまうとシール機能を保つことができなくなります。そのため使用環境温度に応じて材質を選定する必要があります。

ガスケットに必要な特性5.応力緩和特性

応力緩和とは、物体に一定の圧力(締付力)を加えたとき、物体応力(元の形に戻ろうとする物体内部で発生している力、反発力)が時間経過に伴い低下していくことです。応力緩和が小さいほど、へたりにくく、シール機能が持続することになります。この力はガスケットの厚みは薄いほうが小さくなり、厚いシートほど構造破壊される箇所がより多くなるため応力緩和率が大きくなります。

ガスケットシートの形状

ガスケットの種類は、材質・形状によって適合する範囲が異なるため注意が必要です。
ここでは、シートガスケットの形状と特徴についてご紹介いたします。

全面形(FF: Full Face)

・主に全面座のフランジに使用される
・ガスケット外径はフランジの外径寸法
・ボルト穴がついている
フランジの中央に設置しやすいという特徴がありますが、接触面積が広いため面圧を高くできません。

ボルト内接形(FR:Flat Ring)

・主に平面座のフランジに使用される
・ボルトの内側に装着される
・ボルト穴なし
ボルト穴が無いため、フランジの中央に装着しにくいですが、接触面積が狭いため面圧を高くすることができます。

ガスケット種類

ガスケットは「ソフトガスケット(非メタルガスケット)」、「セミメタルガスケット」、「メタルガスケット」に大別できます。

ソフトガスケット(非メタルガスケット)

ソフトガスケットは使用材質によって「ゴムシート」、「ジョイントシート」、「フッ素樹脂シート」、「膨張黒鉛シート」に細別できます。

・ジョイントシート
繊維やゴム、充填剤を配合して加硫したシート状のガスケットです。一般的にゴムを含んでいるため、120℃以下で使用されます(100℃以上で使用する際は条件に注意が必要)。
・ゴムシート
ゴムシートは、一般的に十分な締付力を与えることができない低圧の用途に使用されます。ゴム材質はニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム(VMQ)などがあります。
・膨張黒鉛シート
膨張黒鉛シートは極低温から高温まで使用可能です。応力緩和が小さく、耐薬品性に優れています。
・PTFEシート
フッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)シートは、耐熱性耐薬品性・非粘着性に優れたシートです。PTFEは、クリープ特性(一定の圧力・熱をかけたとき時間とともに変形する特性)がよくないため充填剤を入れたシートもあります。

セミメタルガスケット

セミメタルガスケットは、「うず巻き形ガスケット」、「メタルジャケットガスケット」などがあります。

・うず巻き形ガスケット
うず巻き形ガスケットは、断面がV字形の金属製フープと、仕様に合わせて選定した緩衝材(フィラー)とを重ね合わせ、うず巻状にかたく巻きこんだものです。フランジに適合するよう、内外輪や枝を取り付けたものもあります。このガスケットは、弾性が良くフランジ間の動きに追随するのでシール性に優れています。また、極低温から高温環境や、完全気密を要求されるような環境で使用されます。

・メタルジャケットガスケット
メタルジャケットガスケットは、耐熱クッション材(中芯材)の外側を金属薄板で被覆したものです。被覆金属材質を選ぶことによって、高温条件でも使用可能です。

メタルガスケット

メタルガスケットは、「リングジョイントガスケット」、「金属平形ガスケット」、「金属ノコ(鋸)歯形ガスケット」があります。

・リングジョイントガスケット
リングジョイントガスケットは、鍛造した金属材料を機械で切削加工したガスケットです。主に、高温・高圧箇所に使用されます。
・金属平形ガスケット、金属ノコ歯形ガスケット
金属平形ガスケットは、圧延金属版から打ち抜き加工などによって製作された平形のガスケットです。
金属ノコ歯形ガスケットは、シール性を高めるため、表面に山をつけ接触面積を小さくしたガスケットです。シール性は優れていますが、フランジの座面を傷つけてしまうことがあるので、膨張黒鉛やPTFEを薄く貼り傷がつかないように加工することもあります。

フランジについて

フランジとは、パイプとパイプを接続するために使われる部品のことです。フランジは基本配管で多く使用され、配管の中をメンテナンスしやすくするためや、組み立てを簡単にするためなどの理由で使われています。接続部分にはガスケットでシールする場面が多くあります。また、フランジには内部にかかる圧力に耐える強度も必要です。

フランジ座面の種類について

ここでは、フランジのガスケット座面(接合面)の形状についてご紹介します。フランジの形状は複数あるため、用途や使用するガスケットの種類によって使い分けが必要です。

全面座(FF:Flat Face)

フランジ面が全面平らな構造になっているフランジで、主に低圧用に使用されるガスケット座です。
全面形ガスケットを使用します。

平面座(RF:Raised Face)


ガスケットを装着する部分がボルトの通る部分より盛り上がって団がついた構造になっています。全面座よりもガスケット面圧を高めることができ、比較的に高圧用のフランジのガスケット座として使用されます。

タング・グルーブ座(T&G:Tongue&Groove)

平面座(RF座)にガスケットを落とし込んで締め付けるようにしたガスケット座です。
平面座に溝がついた「グルーブ座(TG-G)」と、平面座に溝形の凸を設けたもの「タング座(TG-T)」ではめ込み接合するものです。ボルト穴のないボルト内接形(FR形)ガスケットを使用します。

メール・フィメール座(M&F:Male&Female)

フランジの接合面を凸のある「メール座(MF-M)」と、凹みのある「フィメール座(MF-F)」をお互いはめ込んで接合するガスケット座です。

リングジョイント座(RJ:Ring Joint)

フランジの接合面にリングジョイントガスケットが入れられる溝が設けられている座面です。リングジョイントガスケット以外は使用できません。

接合方式

フランジは管との接合方式の違いによってさまざまな種類があります。

・突合せ溶接形フランジ(ウェルドネックフランジ)

突合せ溶接形フランジは、管との突き合わせ部分に開先加工を行い、溶接します。熱応力や振動に対する強度に優れており、高温高圧の用途に適しています。

・差込み溶接形フランジ(スリップオンフランジ)

パイプをフランジの内側に差込み、フランジ上面と反対側内径部分の接触部分2か所を溶接します。開先加工が不要なため、施工が簡単というメリットがある一方で、強度面では突合せ溶接式フランジよりも劣ります。

・突合せ溶接形フランジと差込み溶接形フランジのフランジ内径比較

突合せ溶接形フランジと差込み溶接形フランジではフランジ内径が若干異なります。
突合せ溶接形フランジの内径は、パイプ内径と同じ寸法です。一方、差込み溶接形フランジの内径は、パイプがフランジの内径(内側)に入っているため、パイプの外径よりも大きい寸法となります。

ガスケットの選定条件 選定方法

上記で紹介したように、ガスケットは材質や形状の違いなどによって多くの種類が存在し、それぞれに適応範囲があります。そのため、使用環境に応じて適切に選定しなければ、流体の漏れや劣化によって交換頻度が増えたり、メンテナンス作業に時間がかかったりするなど様々なデメリットが生じます。
長期的に安定してシールするために、ガスケットの選定方法を紹介いたします。

使用条件に応じたガスケットの選定

ガスケットの選定にあたり、必ず考慮すべき条件が「流体」「温度」「圧力」です。
条件ごとに簡単に分類すると以下の通りです。
ソフトガスケットは、200℃、3MPa程度以下の低温、低圧の範囲、
セミメタルガスケットは、200℃~400℃、10MPa程度の中温、中圧の範囲、
メタルガスケットは、400℃以上、45MPa程度の高温、高圧の範囲で使用されます。

条件 ガスケット種類
温度 400℃以上 メタルガスケット、セミメタルガスケット
200~400℃ セミメタルガスケット、膨張黒鉛シートガスケット
低温~200℃ 膨張黒鉛シートガスケット、フッ素樹脂(PTFE)シートガスケット
ジョイントシート、ソフトガスケット
圧力 高圧 メタルガスケット、セミメタルガスケット
中圧 セミメタルガスケット
低圧 膨張黒鉛シートガスケット、フッ素樹脂(PTFE)シートガスケット
ジョイントシート、ソフトガスケット
流体 腐食性流体 フッ素樹脂(PTFE)シートガスケット
低温流体 膨張黒鉛シートガスケット

※上記図の分類ついては、各条件に対する代表的なガスケットを示したもので、そのほかの条件によって推奨するガスケット、使用可能ガスケットは異なる場合があります。

使用フランジに応じたガスケット選定

フランジが異形状や極端にシール幅の狭いものなどは、うず巻き形ガスケットは使用出来ずシートガスケットなど他のガスケットの選定が必要となります。そのため、「フランジ形状」「寸法」を考慮する必要がある場合もあります。

ガスケットの材質・形状によって、フランジ座面に適合する場合と、適合できない場合があります。簡単に表にまとめると以下のようになります。

ガスケット フランジのガスケット座の種類
名称 形状 平面座 全面座 メール・フィメール座 タング・グルーブ座
ラージ スモール ラージ スモール
ゴムシート FF
FR


膨張黒鉛
シート
FF
FR






PTFEシート FF
FR






PTFE被覆
シート
FF
FR






ジョイント
シート
FF
FR






メタル
ジャケット
ガスケット
FF
FR
金属平形
ガスケット
FF
FR
鋸歯形
ガスケット
FF
FR

備考 ○:適応する △:適応する場合がある ―:適応しない
※△:使用条件によるため確認が必要です。
メール・フィメール座、タング・グルーブ座には、溝の幅によってラージ寸法とスモール寸法があります。

その他ガスケット選定条件

他にも、「コスト」「許容漏れ量」「締付力」「使用機器」などの条件を考慮するとより適したガスケットを選定することができます。
また、作業性や許容漏れ量を少なくするなど性能を重視すると製品「コスト」が高くなる場合があるため、優先する条件を考慮して選定する必要があります。
これらに加えて配慮すべき条件として、「信頼性のある販売元」も重要な条件の一つです。万が一不具合が発生した時、すぐに相談・対応が可能な販売元であると購入後も安心して使用できます。

まとめ

ガスケットは目的や条件に合わせて適切な材質を選ぶことが大切です。ガスケットの材質によっては、各種機器の劣化を早めてしまったり、溶けたりする可能性があります。また、適切な選定ができていないと重大事故にもつながりかねないため、注意が必要です。
各使用条件において、どのガスケットがふさわしいのか分からないという場合は、弊社に問合せいただければ選定いたします。
ご相談・ご質問などございましたら、お問合せフォームよりご連絡をお願いします。

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